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星景写真の撮影記録・雑記等

OM-1で星景写真(手持ちハイレゾショット編)

 OM-1の可能性

私がフルサイズに移行せずOM-1にこだわった理由として、「三脚固定+手持ちハイレゾショット」と「手持ち撮影ができること」の2つに星景写真で唯一無二となる可能性を感じたことが挙げられます。今回は「三脚固定+手持ちハイレゾショット」を使用した所感となります。

三脚固定+手持ちハイレゾショット


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手持ちハイレゾショット概要(動画説明より)

  • コンピュテーショナル撮影
  • 12枚の画像を一度のシャッターで素早く撮影、合成し5,000万画素の高画素で写真を撮影
  • 複数枚画像を合成することでノイズを約2段分改善
  • 新エンジンTruePicXにより処理時間を大幅に短縮

「手持ちハイレゾショット」を三脚に固定して使用し、数秒の露出時間で撮影することで、各コマの星の日周運動によるズレを同機能により位置合わせ合成することができます。

即ち、星の追尾効果及び12枚の加算平均合成によるノイズ低減効果を持つ高画素画像が得られるということです。

「手持ちハイレゾショット」自体は前世代機にも搭載されているのですが、 OM-1では処理時間の大幅短縮もさることながら、E-M1 MarkⅢまで6400であったISO上限が25600に拡張したことも大きな進歩です。

星景写真で使えるか

星と地上を合わせて撮影した場合、星を追尾して点像となるのなら、地上は流れることになります。

星ナビでは検証結果が次のように紹介されています。

地上景色が入る星景写真でも、星空が大きく占める画面構成のときは追尾効果がうまく働いた(地上物は流れる)。しかし、地上景色の比率が高かったり、樹木など星空と景色が入り組むような場合は、地上物が止まるところと星が止まるところが混在してしまうことがあった。(アストロアーツ 月刊星ナビ2022年9月号)

「地上が止まるところと星が止まるところが混在する」ということは「手持ちハイレゾショット」で得られる画像が単にディザリング撮影した画像を位置合わせしたものでないと考えますが、その場合「星の追尾効果が働いた場合に地上が流れる」ことと矛盾が生じます。地上景色があっても星と地上の両方とも合成に成功するのではと考え、とりあえず撮影してみました。

作例①

f:id:moewe26:20240127105041j:image2022.9/OM SYSTEM OM-1/M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO/ISO12800 f/1.8 4.0s×12手持ちハイレゾショット/LeeソフトフィルターNO.4/ORF.をDxO pureRAW3で処理→Photoshopで現像

「星空が大きく占める画面構成」です。星4秒×12枚で計48秒の露光時間ですが星は追尾が働き綺麗な点像となっています。

さらに、強いソフトフィルターを使用している影響もあるかもしれませんが、地上の流れている様子はありません。

作例②

f:id:moewe26:20240127213707j:image2023.2/OM SYSTEM OM-1/M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO/ISO12800 f/1.8 4.0s×12手持ちハイレゾショット/LeeソフトフィルターNO.4/ORF.をDxO pureRAW3で処理→Photoshopで現像

作例①と同様の設定で「地上景色の比率が高く、星空と景色が入り組む場合」です。地上の割合が多めで前景に石碑、木の枝や光害(スキー場)がありますが、合成は成功しました。

星については中央の地上付近(オリオン座、牡牛座から下あたり)のみ星像が日周運動方向に伸びており、その他の星は点像となっています。一方で、地上の流れている様子はありません。

星を追尾できていない部分が限定的であり、また地上にズレがみられないため、単なる位置合わせによる合成はしていないのではと思います。

(左)作例②画面中央部(星は止まる)(右)同画面中央下部(星は流れる)

積極的に使いたい

結果としては、星空が大きく占める画面構成では星空も地上も問題はなく、星空と景色が入り組む場合は星の一部で追尾する・しないが分かれる不整合がみられました。

画としては解像度とダイナミックレンジ拡大効果が大幅に改善され、通常撮影(一枚撮り)と比べて圧倒的な描写となりました。

また、高感度ノイズに関しても2段と言っても過言でないほど思えないほど改善しており、結果として夏の天の川等で必要となる強調処理において調整幅が広がりました。

合成精度については、結局のところ「やってみなきゃわからない」ため、これだけで撮影するのはやはりリスキーですが、地上を含む撮影においても予想以上に健闘しており、総合的にはメリットが大きいため、星景写真でも撮影時に積極的に使用してよいのではと思います。

理想的な「合成写真」

言うまでもなく、ハイレゾショットは「合成写真」です。

しかし、ワンシャッターでカメラが自動で複数撮影、即時合成を行うハイレゾショットは「一枚撮り」であると錯覚させてくれます。

私は観念的に「写真はカメラで撮影する一枚であってほしい」と考えています。

例えば、地上と星空をそれぞれ適した方法(追尾、加算平均合成等)で別々に撮影し、画的に整合するよう位置合わせして撮影時刻を再現する「合成写真」を作ることは私もよくありますが、画像処理中には何処か写真としての「後ろめたさ」を感じることがあります。

上記の撮影とハイレゾショットの合成は基本的に同じであると頭では理解しつつも、ハイレゾショットはワンシャッターの操作感で写真を作ることと、合成処理(技術)が個人ではなくカメラに帰属するため、この「後ろめたさ」を感じません。(コンピュテーショナルフォトグラフィーの画作りを写真と認めるかという別問題がありますが。)

この点で、個人的にハイレゾショットは理想的な「合成写真」であると思います。

長秒時ノイズに難あり

正直いって想定外でした。

OM-1は撮影時に「長秒時ノイズ低減」機能をONにするか、現地でダークフレームを撮影しておけばメーカー純正の現像ソフトであるOM Workspaceを使用したノイズ低減処理が可能でですが、「手持ちハイレゾショット」は撮影時に「長秒時ノイズ低減」機能が使用できません。ハイレゾショットでダークフレームを生成しようとすると合成に失敗します。)

しかし、少なくとも作例の撮影設定とした場合、長秒時ノイズの発生が避けられませんでした。

長秒時ノイズ(作例①)

9月の宮古島は気温は25℃と高温で、20箇所近く長秒時ノイズ(ホットピクセル)が出ていました。

作例①の撮って出し(jpeg)をトリミング(アルタイル付近(左)とへびつかい座の下部分(右))したもの。青、赤及び黄緑のホットピクセルがそれぞれ出ており(左3箇所 右2箇所)、画像全体だと相当な数になります。

長秒時ノイズ(作例②)

1月下旬で気温2℃の環境なら大丈夫かと思いましたが、やはり数箇所出ていました。

作例②の撮って出し(jpeg)をトリミングしたもの。(左は画面右下に1箇所(赤)、右は画面中央に1箇所(青))

OM Workspaceの「ゴミとり」でも処理することはできますが、画像サイズが大きいことも相まって動作が遅くなり、ホットピクセルの捜索も塗り潰しも相当な根気が必要です。私は挫折して結局DxOpureRAWを使用しています。それでも半分程度しか消えないので、残りはPhotoshopでちまちまとコピースタンプで塗り潰しています。

通常撮影で作例の設定にしてこれだけ長秒時ノイズが出るでしょうか。ハイレゾショットの使用も原因ではないかと思いますがここでは未検証です。

星も撮るには十分な性能

「三脚固定+手持ちハイレゾショット」は機能や撮影条件が限定的で、また不確実であるものの、赤道儀なしで星を追尾し、現像ソフトなしで複数画像の加算平均合成によるノイズ低減効果が得られ、宛ら一枚撮り撮影の如くカメラ内で完結することが可能です。星と地上それぞれが整合する合成処理(?)を行う場合もみられ、地上を含めた星景写真にも使い道は十分にあります。

また、通常撮影(1枚撮り)と比べると、画質面で圧倒的な差があります。星景写真をOM-1で撮影するにあたりセンサーサイズによるハンデを克服するための方法として、今後も使用していきたいです。

しかし、星景写真を志向する場合において、赤道儀による追尾撮影や画像処理ソフトでの合成処理は制限なく行うでしょうし、合成処理が自動かつ即時である必要性はありません。また、高画質とはいえ元画像はセンサーサイズの小さいm4/3による超高感度撮影であるため、特にダイナミックレンジに顕著ですが、総合的にはやはりフルサイズに及びません。

従って、この撮影手法を求めてOM-1が積極的に選択されるものではなく、あくまで同機における飛び道具という位置付けでしょう。

それでも、これだけの画像をカメラ1台の三脚固定撮影だけで生み出せるのだから撮影の手軽さも相まってコストパフォーマンスに優れているのは間違いなく、星景写真「も」撮りたいという方にとって十分な性能ですので、是非試してみてはいかがでしょうか。

Introduction

はじめに

星景写真を本格的に始めるにあたり、活動内容の発信及び記録を目的としてブログを開設しました。よろしくお願いします。

カメラ歴と使用機材

カメラは初心者で、使用機会は旅行の記念写真と限定的。それでも折角だから星空の写真も撮りたいという考えから、2015年からオリンパスのE-M10を使用してきました。以降もオリンパス機を使用し、現在はOMシステムのOM-1を使用しています。

しかし、撮影を重ねてカメラ情報を収集するにつれ、星景写真を本格的に始めたいという思いが強くなりました。換言すればm4/3での撮影に限界を感じたといえます。フルサイズ機を購入するに至りました。

 

購入したフルサイズ機は

中古 Cannon 6D(2012年発売)

色々悩みましたが、フルサイズ機の持出先及び被写体が星景しか想定されず、かつm4/3を手放せないため、10年以上前の一眼レフ機を手にするに至りました。

当分はこれ1つです。ただ魚眼レンズはM.ZUIKO DIGITAL ED 8mm Fisfeye F1.8 PROしか保有してないため、OM-1も使用することはあると思います。